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<環境視点> ゲノム編集で外来魚駆除 - 中日新聞

メスが不妊化するようゲノム編集したブルーギルのオス(水産研究・教育機構 増養殖研究所提供)

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 ゲノム編集技術を利用して外来魚のブルーギルを駆除する研究が、国立研究開発法人「水産研究・教育機構 増養殖研究所」玉城庁舎(三重県玉城町)で進められている。卵をつくるのに必要な遺伝子を壊した魚を野生に放ち、不妊化した魚を増やすことで根絶を目指す計画。ゲノム編集した生物を生態系の再生に活用する狙いだが、世界的にも例がない試みとみられ、環境への影響は未知数だ。

◆不妊化広げる

 ブルーギルは北米原産の外来魚で、全長二五センチほどまで成長。一九六〇年ごろに国内に持ち込まれ、広がった。甲殻類や昆虫、稚魚、水草など何でも食べ、在来種が姿を消すなど生態系に大きな影響が出ている。

 滋賀県の琵琶湖では被害が甚大。長年外来魚の駆除に取り組む「琵琶湖を戻す会」の高田昌彦代表(57)は「昔はタナゴ類やモロコ類など在来魚が釣れたが、今は外来魚ばかり」と嘆く。

 増養殖研究所ゲノム育種グループ長の岡本裕之さん(52)によると、ゲノム編集技術を使った駆除の研究は二〇一三年に開始。卵をつくるのに必要な遺伝子はオスもメスも持っている。この遺伝子をゲノム編集で切断し、壊れた遺伝子を持つオスをつくる。

 このオスを放流し、放たれたオスが野生のメスと交配すると、受精卵から生まれる次世代の魚も同じ壊れた遺伝子を持つ。これらの魚が交配を繰り返すと、卵をつくれない不妊化メスが増え、最終的に根絶する=イラスト参照。

 これまでにブルーギルの全ゲノムを解析し、オスの該当する遺伝子を切断することに成功。稚魚やメスを含め約二千匹を飼育する。今後、管理された隔離区域で自然に近い環境をつくり、三〜五年データを取る。野外のため池での飼育を経て、最終的には琵琶湖への放流が目標だ。

 生息数の数%を毎年放流し、網や電気ショックなど従来の駆除を組み合わせることで十数年から三十数年で根絶できると試算する。

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 研究グループが注目したのは、一九七〇年代に沖縄で行われた外来種の害虫「ウリミバエ」の不妊化による駆除。放射線を照射して生殖機能を壊したハエを自然に放ち、約二十年かけて根絶に成功した。

 この方法だと、不妊化した個体を大量に放つ必要がある。在来種への悪影響も考えられ、ゲノム編集を応用することになった。

◆生態系、影響は

 生態系への影響はどうなのか。環境省によると、これまで、ゲノム編集された生物が野外に放たれ、他の生物に影響を与えたという知見はないという。

 国内では、生態系の多様性を守るための国際的な枠組みに基づく「カルタヘナ法」があり、新たな遺伝子を人為的に加える「遺伝子組み換え」の生物を自然に放つ場合、国への届け出と承認が必要となる。

 一方、ゲノム編集で遺伝子を切断するだけならば「遺伝子組み換えではない」として規制の対象外。ただ、今回は外来魚のため、放流には外来生物法に基づく国の許可は必要だ。

 星槎(せいさ)大(神奈川県箱根町)の鬼頭秀一教授(68)=環境倫理学=も「遺伝子が壊れるだけなら、自然界でも日常的に起きている。影響はほとんどないと考えられ、外来魚の駆除が優先される」と指摘。ただ、「放たれる生物によっては影響が出る可能性はある。それぞれを総合的に考えていくことが大事」と話す。

 (長田真由美)

 <ゲノム編集技術> 生き物がそれぞれ持つ全ての遺伝情報(ゲノム)を、特殊な酵素を使って切断したり、つなげたりして生き物の性質を変化させる。特定の遺伝子を狙い、正確に編集できる。異種間も含め、特定の遺伝子を組み込む遺伝子組み換えとは異なる。

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