自分のストーリーを見返した時、明らかに欲が足りなかった
──新曲「Act」はTVアニメ『デュエルマスターズ キング』のEDテーマということもあり、歌詞やメロディーがこれまで以上にストレートですね。 智:そうですね。少し考えが変わったというか。これまではタイアップのお話をいただいても100パーセント作品に寄り添うとか、そのアニメをしっかり意識して作るってことをやってこなかった部分があったんですよ。でも、こういう機会は毎回来るわけでないから、それはもったいないんじゃないかと思うようになったんです。逆に、作品に寄り添うことをちょっと楽しんでみようかなと。 海:以前は“こういう時だからこそ自分たちらしさを全開にし、アクの強い部分を押し出したほうがいい”という考え方だったんです。どちらも的を射ているとは思うんですけれど。 智:あとは、“媚びたくない”とかね。もちろん媚びてはいないんですけど、“一緒に作る”という感覚でやってみたかったんです。 ──では、どういう心境で歌詞を書いていきましたか? 智:やはりアニメを観る若い子たちのことは意識しましたね。自分がどうやって夢を見て、その道を辿ってきたか…といった部分を伝えたかったというか。バトルアニメなので、夢を持って勝負をする世界観だから、そこは僕らのようなバンド活動と重なると思いました。 ──自分たちがこれまで経験したことを伝えたいと。 智:俺たちも叶えられてないことがたくさんあるから、そこはまだまだ進んでいきたいですけど、その中で伝えたいのは、自分のストーリーを見返した時、明らかに欲が足りなかったということなんです。新型コロナという時代背景もあって、チャンスはひとつも逃してはいけないと感じてて、もうちょっと欲張りになる必要があるといった想いを込めました。 ──今までvistlipは欲張りではなかった? 智:海はリーダーだし、欲張りだったと思いますけどね。 海:そうですね。言ったことの3割ができればいいと思っているので、大人たちとは“全部よこせ”というスタンスで話さないといけないと思っています。だから、メンバーには“こいつ、何をとんでもないこと言っているんだ!?”みたいな顔で見られた時はありましたね(笑)。そういう意味では、智が一番無欲で、一歩間違ったらカッコつけているというか。“これをやったらカッコ悪い”というのを気にする人なので。でも、立場的にその見え方や見られ方は大事だと思うんですよ。ヴォーカリストだからこそなのか、こうだからヴォーカリストになったのかは分からないですけど(笑)。 ──海さんから見て、智さんにはどういう変化がありましたか? 海:vistlipを結成して14年になるし、その前から知っているので、なだらかに変化した部分がありますね。ただ、バンドに何かしら大きなことがあると、そのタイミングで一番変わるのは智なんですよ。バンドの真ん中にいるので、外的な要因でもその影響を一番受けるし、反響も一番ダイレクトに来るだろうし。それを全部素直に受け止めるから、見ていて良い方向に変わったり、逆に良くない方向にいった時期もあったと思います。けれど、いろいろなことがあって、本当にここ最近は大人に、冷静になった。あとは、ちょっと暑苦しくなりましたね。 ──暑苦しくなったとは? 海:それこそ一回、本当に熱量が低くなって。もともと感情的になりやすかったからコントロールができるようになったのは良かったけど、“もっと出していいよ”という時もあったんですよ。でも、最近はいい塩梅になったというか、バランスを取るのがうまくなった気はします。 ──そういった変化が「Act」にも反映されていると。歌詞もストレートですが、曲も疾走感があってダイレクトに響いてきます。 海:もともとタイアップ用に絞り出そうと思っていたものが3曲くらいあって、「Act」はその作業をしている合間にフワッととサビの部分だけ降りてきたんです。提出2日前くらいだったから、デモはひどかったですよ(苦笑)。なので、今回は本当に出てきたままです。“勢いやアツさが重要で、ストレートでいい”みたいなことを言われていたので、これもありかなといった感じで、そのまま勢いで作って渡しました。 ──メンバーとの制作上でのやり取りはいかがでしたか? 海:僕が曲を作る時はギターと歌だけの状態に、ドラムとベースを無理矢理つけているんですね。Yuhにはほぼ何もつけないで渡しますし。一応、“ここはこんな感じのギターにしてほしい”というイメージは伝えるんですけど、それは音楽的な説明ではなくて、今回も相当意味の分からないことを言ったと思います。ギターソロも“まっ暗いところをギターで切り開いて、青空に変えるような感じ。闇を切り裂く感じでお願いします!”と伝えたら、“うん。分かった”と応えてくれて、最初はもっと明るいギターソロだったんで“これだと切り裂けない”と言ったり(笑)。 ──そういうオーダーだったんですね!? 海:瑠伊にも“ここのベースは一番目立って!”とか“ここは緩くていいから”くらいしか言っていないですね。ただ、Tohyaに関しては、俺が打ち込んだドラムが意味不明だってすごく怒られました。その通りなので、何も言い返せないんですけれど(苦笑)。でも、彼が持ってきたものに関しては“こうじゃないんだ”と言って。“じゃあ、どうなんだよ!”ってTohyaも大変だったと思いますね。コード進行もYuhがデモの段階で“このメロディーだったら、こういう進行のほうがいいと思うよ”と組み替えてくれて、サビも少し進行を変えました。“ギターソロは部分的にイントロと同じコード進行にしたい”と言われたから、そこは“弾きやすいのにしていいよ”と。ギターのアレンジだけで3パターンくらいまったく違うものを作ってきてくれたから、その中で“ここは1がいい。ここは2で、ここは3がいい”みたいな感じでやり取りをしていました。今回はシンセが入っていないので、聴きやすい曲になったんじゃないかなと思いますね。 ──ちなみに、バンドに憧れる人が真似してみたくなる演奏というのも意識されます? 海:僕はそういうのを意識するとちょっと感覚がずれているとか、違う方向にいっちゃうので、基本的には何も考えていないんです。逆に瑠伊はすごく気にしていて、ベースを弾く人、弾きたい人が気になるフレーズにしたり、Yuhも常々そういうのは気にしていますね。僕のギターのフレーズに関してはコードでガーン!というのが多いので、初心者向けかもしれないです。いつものシングル曲とは色が違うけど、結局はちゃんとvistlipらしい感じになったと思いますね。 ──MVには歌詞がついていますが、やはり子供たちにしっかり届いてほしいという想いからなのでしょうか? 智:基本的に歌詞はつけていきたいということはメンバー間でも話していて。 海:うん。なので、4つ前くらいのMVからつけているんですよ。 智:ちゃんと目で観てもらいたいという想いはありますね。耳で追いつかない部分とかが補完できるように。 海:特に今回はね(笑)。《この火種育てて》というところとかは耳だけだと分からないかなと。 智:でも、滑舌のことはあまり気にしたくないんですよ。リズム的に気持ち悪いんで。それにうちらのファンの人たちは歌詞を調べてくれて好きになってくれる人も多いから。そういうこともあって、MVで歌詞を入れることによって読んでもらえる環境をひとつ増やそうと思ったんです。 海:逆に“何を言っているのか分からない”とネタにしてもらっても構わないとも思っています(笑)。 智:それもいいね(笑)。昔は気にしていたんですけど、今はそれも面白いと思う。
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April 08, 2021 at 02:35AM
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