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抽象画、何をどうやって見たら良いの? モンドリアン作品で考える「ポイント」 - 文春オンライン

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 モンドリアンという名前を聞いたことがなくても、このスタイルの作品は目にしたことがあるでしょう。本作は正方形の画面に、直交する垂直線と水平線、赤・青・黄の三原色と、黒・白・灰色の無彩色で構成されています。

 このような抽象画は、どうやって見たらいいのか悩む人も多いはず。味わうポイントは、いわゆるデッサン力などの技巧やモチーフの読解にあるのでなく、線・色・サイズなどの要素同士のバランスの取り具合にあります。

周囲の額部分より、絵の方がわずかにせり出している
ピエト・モンドリアン『大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション』1921年 油彩・カンヴァス デン・ハーグ美術館所蔵

 そもそも要素同士のバランスとは、縦線に対しては横線、左側に目立つものがあれば右側にも何か配置するなど、シーソーのように要素間で釣り合わせるということです。本作では、たとえば色部分と白部分がオセロのように拮抗しています。また、青は右下に一か所だけ使われていますが、面積を小さくしているので日の丸弁当の中の梅のように際立ち、大きな赤・黄部分と存在感において釣り合っています。

 モンドリアンは、画面中で一つの要素が優位にならず、色や大きさが違っても等価的に均衡し、全体として調和する絵画を目指していました。たとえば人物画なら人物が「図」で背景が「地」になり、画面内に主従関係が生じます。そんな階層のない絵画ということです。また、左右対称を排し、左右非対称な均衡を追求しました。左右対称は画面の中心線を軸にするため、中心が周辺より優位になるからです。異なる要素同士でバランスを取りつつ全体をまとめるのは簡単ではありません。私たちが生きる現実の世界でも、差異があるものが集まれば、階層とその優劣が生じてしまいがち。モンドリアンはその難しいバランスを、どう取っているのかが見どころです。

 モンドリアンの作品を見るとき、もう一つポイントがあります。20世紀を代表する彫刻家アレクサンダー・カルダーは1930年、モンドリアンのアトリエを訪れます。「作品を揺らしてみてはどうでしょう」と提案したところ「必要ない。私の作品はすでにかなり速い」と返答されたそう。モンドリアンは真面目で穏やかな人柄で知られていましたが、音楽はジャズやブギウギといったリズム感の強いものを好み、ダンスも大好きでした。彼の絵も踊っているようです。本作の実物を目にする機会があったら、右下角の赤い部分を手で隠してみてください。急に絵が止まったような印象を受けるから不思議です。他にも隠してみて、そのバランスや印象の違いを試してみてくださいね。

 モンドリアンは絵の見せ方にもこだわりました。従来の額縁は絵が奥まっていて、彼が望まない立体感を生じさせました。本当は額縁がない方が良いと考えていましたが、周囲から反対されたため、本作が納まっている、絵の方が手前にせり出すタイプの、新しい額縁を考案したのでした。

 このような制作態度の背景には、神智学という哲学と宗教を融合した思想への共鳴もあります。自然と精神といった対立するもの同士の均衡を、造形によって表現しようとしたのです。直観を尊び、時間をかけて目で確認しながら描いたそうです。

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April 14, 2021 at 09:00AM
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