Search

気候変動はどうやって予測? IPCC最新報告書の執筆者に聞く | MBS 全国のニュース - 毎日放送

jn.prelol.com

気候変動はどうやって予測? IPCC最新報告書の執筆者に聞く

更新:2021-08-12 20:44

 「地球温暖化は人間の影響で起きていることは疑う余地がない」と断言した上で「現在のレベルで温室効果ガスの排出が続けば2040年から60年の間に地球表面の平均気温は産業革命前と比べて2度上昇する可能性もある」ことなど、様々な細かい予測が示されていますが、なぜこうしたことが言えるようになったのでしょうか。執筆者の一人、東京大学の渡部雅浩教授(気候力学)に伺いました。(ロンドン支局長 あき場聖治)

Q.今回の報告書、渡部さんが最も注目する点は?

 いくつかありますが、個人的には、今現在、気候がどう変わっているのかという評価、特に猛暑とか豪雨、台風といった極端な気象に対して人間活動が高い確信度で評価された、ということ。これは今までになかったことです。

Q.それがさらなる確度をもって言えるようになった背景は何でしょうか?

 前回の報告書でも今世紀末の、温暖化が進んでしまった時点では極端気象が増える、激しくなるということは言われていたのですが、今回の報告書までの間に、日本でいえば平成30年豪雨(2018年6月から7月にかけての西日本豪雨)、2018年の猛暑など様々な極端気象が起こりました。世界的にも山火事であったり熱波であったりということが起こっていて、研究者は、それら一つ一つのイベントに対して温暖化がどれだけ寄与していたかを評価する「イベント・アトリビューション」という研究を展開してきたんです。この成果が今回の報告書にかなり多く取り込まれて、確信度が上がったということです。

Q.「イベント・アトリビューション」とはどのような研究なのでしょうか?

 シミュレーション研究なんですが、具体的に起こってしまった一つの極端な気象について、コンピューターで何百回とシミュレーションを繰り返すわけです。言ってみればサイコロを何百回も振るようなもの。その中でたまたま極端な現象が起こったりするのですが、そのシミュレーションを、今度は「温暖化が進んでいなかったら」あるいは「進んでいたら」という仮想的な条件で繰り返して実行することで、温暖化がどれだけその特定の異常気象に影響していたか、というのが数値として表せるようになったんです。
 この「イベント・アトリビューション」研究が始まったのは2010年ごろだったんですが、この10年くらいの間に非常に進んできました。
 手法そのものは、以前から地球温暖化の予測に使われてきた気候のモデルによるシミュレーションなので、それ自体は新しいものではありませんが、その使い方が新しいと言えます。

Q.渡部さんの専門分野にある「気候感度」とはどういうもので、なぜそれが重要なのか、簡単にご説明をお願いします。

 一見難しそうな言葉ですよね(笑)
 「気候感度」というのは「大気中の二酸化炭素の濃度が倍になって、気候がそれにあわせて落ち着いたときに、世界全体の気温が何度上がるか」の量なんです。これ自体は仮想的な量ではあるのですが、現実の温暖化の度合いを測る最も物理的な指標になっています。今回の報告書ではこの気候感度の推定幅が過去の報告書に比べて半減した、というのが大きなポイントの一つになっています。
 前回の報告書では、起こりそうな幅として1.5℃から4.5℃、つまり「3℃」の開きがあったんですが、これが今回、2.5℃から4℃と、「1.5℃」の幅になりましたので、実質半分になりました。

Q.半減したことの意義は何でしょうか?

 温暖化の予測の不確実性が減少しました。例えば今世紀末までの排出量シナリオごとの温暖化予測も、この気候感度の(新たな)推定によって修正をしています。また、カーボンバジェットを見積もるのに必要な「過去からの累積のCO2濃度に対する温度変化」という関係を使うところでも、気候感度の推定幅が狭くなったという情報が反映されています。それによって、カーボンバジェットの見積もりの精度が増しました。

Q.「物差し」の目盛りが細かくなった、という理解で良いですか?

 はい。
 これは今回の報告書全体に言えることなんですが、温暖化の科学というのが徐々に成熟して来ていて、その結果として、評価の軸がどんどん精緻化しているんです。前は大雑把にしか評価できなかったものが、例えば0.5℃刻みで、温暖化が進むと何がどう変わるか、という評価ができるようになってきているんです。

Q.それはやはりシミュレーションの進歩によるものなんですか?

 シミュレーションの進歩、あるいはもとになっているモデルが改良されたこと、こういった点は大きな要素だと思います。しかしそれに加えて、前回の報告書から8年の間に様々な観測データが蓄積されてきた、ということも大きな情報源になっています。
 観測データ、という場合には、20世紀以降の、実際に測っているデータに加えて、人間がいなかった、ずっと昔の気候の状態を復元したデータも含まれます。それによって現在の温暖化の状況と、過去の寒冷化していた時、あるいは同じように温暖化していた時、そういったものを全部比較して、統合的に気候の変化を評価できるようになっています。

Q.11月にCOP26(気候変動についての国連の会議)が開かれますが、この報告書が持つ意味は何でしょうか?

 本来であれば、今回の報告書、そして来年以降に出る第二、第三作業部会の報告書、そして統合報告書、ここまでそろって初めて、例えばカーボンニュートラルへの動きに対する明確なメッセージが出せるようになります。COP26の時点で公開されているのはこの第一作業部会の報告書だけですが、カーボンバジェットの見積もりであるとか、将来の「1.5℃」の気温上昇の確率とか、そういった情報は直接(議論の)役に立ちますし、それ以外にも様々な気候の変化、地球システムの変化についてのエビデンス。これらは全ての温暖化政策のベースになるような科学的な知見ですので、それを提供するというのがこの報告書の一番の役割だと思います。

Q.現在見られるような極端な気象が温暖化の影響だと科学者が言う一方で、温暖化の影響を否定する人たちも根強くいる印象があります。科学者としてどう見ていますか?そして科学者ができることは何だと思われますか?

 私、今回、IPCCの報告書の執筆に初めて参加したんですけども、想像以上に多くの科学者が協力して、かつ膨大な文献を精査して報告書をまとめました。学術論文だけでも1万4000本以上の論文を参照しています。科学者ができることというのは、エビデンスを積み上げていくこと。それをわかりやすく情報発信していくこと、に尽きるのではないかと思います。
 おそらく、どれだけ温暖化が進んでも、懐疑的な人がゼロになる、ということはないと思うんです。そこはやはり、先入観だけで判断するのではなくて、エビデンスをもとに判断してほしい、と科学者としては考えます。なので、どれだけ我々が確かな情報を出せるか、というのがやるべきことだと考えています。
 今回の(報告書と同時に公表された)「政策決定者向けの要約」は、報告書本体に比べればわかりやすく書いてあるんですけども、それであっても、なかなか、パッと読んで頭に入ってこないと思うんですよね。ですから、これをもとに、さらにいろんなレベルにかみ砕いて説明する機会というのが重要だと思います。(12日19:57)

最近の関西ニュース

Adblock test (Why?)



"どうやって" - Google ニュース
August 12, 2021 at 06:44PM
https://ift.tt/3s8fODC

気候変動はどうやって予測? IPCC最新報告書の執筆者に聞く | MBS 全国のニュース - 毎日放送
"どうやって" - Google ニュース
https://ift.tt/2DFeZd1
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
https://jn.prelol.com/

Bagikan Berita Ini

0 Response to "気候変動はどうやって予測? IPCC最新報告書の執筆者に聞く | MBS 全国のニュース - 毎日放送"

Post a Comment

Powered by Blogger.