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国外から“フルリモート勤務”の総務担当者 どうやって働いているのか - ITmedia

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本記事について

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークが普及した一方、「出社せざるを得ない」とされる職種も少なくない。総務担当者はその代表例だ。しかし、一部ではフルリモートで働いている総務担当者もいる。どのように働いているのか。著者は人材シェアリングサービスを運営するJOINSの猪尾愛隆代表取締役。

 コロナ禍でリモートワークが広がり、どこにいても仕事ができるようになった。筆者が代表を務めるJOINSは、地方の中小企業と副業人材をマッチングする会社だが、2017年の創業以来、メンバー全員が副業・フルリモートで仕事を進めている。メンバーの中には海外から参画する総務担当やエンジニアもいる。海外在住者がフルリモートでどんな働き方を実現できているのか、どのような工夫で業務を進めているのかを紹介したい。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

アジアの大都市からリモート勤務、顧客管理からセミナー案内まで

 アジアのある国で暮らす酒井さん(仮名、30代女性)は、日本時間の午前9時にパソコンを立ち上げる。「セミナーの参加者のリストをHubspotで作成しました。確認してください」。Slackで呼び掛けると他のメンバーが次々に反応する。顧客とのメールのやりとり、オンラインでの打ち合わせなどを進め、合間には子どもの学校の送迎や家事をこなし、午後6時までには業務を終える。

 酒井さんは総務に関連する業務を担当している。顧客管理やセミナーの案内と出欠の確認、新しく加わるメンバーのアカウントの環境設定など、守備範囲は広い。昨年2月から当社の業務に携わっている。

 大学卒業後、日本のエンジニアリング大手で、総務担当としてバリバリ働いてきたが、結婚し退職。以来、酒井さんは海外駐在のパートナーに同行し、通算10年、南米や中東など海外で生活している。就学前から小学生まで3人の育児もしている。

 働くことが好きで、家族の赴任先でもさまざまな仕事にチャレンジしてきたという。日本人学校の立ち上げに関わり、開校後も学校運営をサポートした経験もある。ただ、家族の転勤があるたびに仕事を変えたり、中断せざるを得ない環境だった。

 次男の出産から半年ほどたった20年冬、「駐在員の配偶者」のキャリアをサポートするSNSコミュニティーで当社の求人を見てすぐに応募した。酒井さんは「子どもが小さく、完全在宅の仕事を希望していた。『リモート大歓迎』と書かれていたので迷わず応募した」と話す。

オフィス常駐ゼロ、郵便物は自宅転送

 一般に総務の仕事はリモートワークが浸透しにくいといわれている。総務の専門月刊誌「月刊総務」の調査によると、1回目の緊急事態宣言中、「完全にテレワークだった」と回答した総務担当者はわずか1.6%だった(回答者数は320人)。郵便物の確認、契約書の押印など出社が必要な業務がある、というのが主な理由だった。

 当社は日本のメンバーもフルリモートなので、都内のオフィスに常駐者はいない。皆、自分の働きやすい場所と時間で業務を進めている。創業当初、郵便物はメンバーが定期的に確認していたが、最近は代表である私の自宅に転送されるようにしたため、会社に行って郵便物がないかチェックする作業は不要になった。

 契約書など書類に関しては、電子契約書が大半だが、紙の契約書で郵送が必要なケースもある。「代表印を押したり、郵便局に行って郵送したりといった物理的に対応が難しいことは、他のメンバーにお願いするが、相手の負担を最小限にするよう工夫している」(酒井さん)

 その他の郵送が必要な書類は送付物のデータと宛先を入力すると、郵便局が印刷し発送してくれるサービスを利用する。また、紙の請求書が必要な場合もクラウド経理ソフトの郵送代行サービスなどを使うことで、遠隔から郵送業務ができるようにしている。

 当初、総務担当は酒井さん1人だったが、現在は2人のメンバーが新たに総務チームに入った。酒井さんは今、営業チームのサポートに仕事の軸を移しつつある。

 酒井さんの稼働は1日平均2〜4時間で、1カ月で見ると60〜70時間ほど。当社は時給制のため、それぞれのメンバーが稼働できるタイミングで業務を進める。週1回のオンライン会議やSlackでコミュニケーションをとり、日本にいるメンバーとほぼ変わらない環境だ。

 フリーランスになって、今よりも高い報酬を得るという選択肢もあるが、今は考えてはいないという。「海外での生活は、実家に頼ることは難しい。子どもとの生活を第一に考えた時に、完全在宅で働くことができる今の働き方が私には合っている」と話す。

「日本で働くことを考えて」エストニア在住のエンジニアも参画

 もう一人、当社にはエストニアから参画しているメンバーがいる。エンジニアの南さん(仮名、20代男性)だ。日本で就職した後、エストニアの大学に留学。大学卒業後は現地企業にソフトウェアエンジニアとして就職した。今もエストニアで働きながら、当社でシステム開発を担当している。

 「いずれ日本に帰国して仕事することを考えているため、日本で標準的に使われているシステムに触れたいと考えて昨年参画した。フルリモート・フルフレックスで週2日程度の稼働でもOKという求人はとても珍しかった」と振り返る。

 南さんは本業の始業前や夜、週末に業務を行い、週20時間ほど稼働する。主にプラットフォーム開発や、UI(ユーザーインタフェース)の改善などを担当し、Slackで日本のエンジニアとコミュニケーションをとる。

 日本とエストニアとは6時間の時差があるが、ミーティングはエンジニアチームの責任者と主に2人で行い、お互いが辛くない時間帯で調整する。南さんは「日本の技術を学ぶことによって、自分の成長につながっている」と話す。当社の業務で得た収入はエストニアで確定申告しているという。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

仕事への「違和感」 自由に語れる場の醸成を

 人材側にとって、海外に住みながら日本企業で働くメリットは、海外赴任の同行者がキャリアを中断しなくてよい点だ。一方、企業側は優秀な人材の確保というメリットがある。

 フリーランスの人材サービス会社Warisの調査によると、配偶者の海外駐在に帯同する人の98%が女性だった。また全体の約6割が帯同によって仕事を辞めている。キャリアを中断した理由で最も多かったのは「自分が働いていた企業が海外での就業継続の仕組みがなかった」だった。Zoomなどのオンライン会議ツールや、仕事の進み具合を確認できるクラウドソフトなどデジタル化が進むことで、こうした問題は一定程度、解消できるのではないか。

 リモートワークが広がることで、酒井さんのように、家族の海外赴任に同行する女性の就業機会が増えることは、日本の企業にとっても優秀な人材の確保につながる。また、南さんのように将来的に日本の企業で働くためのキャリア形成といった働き方も可能だ。年内には、当社の別のメンバーもベトナムで新生活をスタートするが、仕事を続ける予定だ。

 代表である私自身、創業まで15年近く、毎日オフィスに出社するスタイルでしか仕事をしてこなかった。このためリモートワークで本当に会社が回るのか、特に組織としての連帯感が生まれるのか、という不安はあった。

 しかし、この4年間やってみて分かったことは、物理的に同じ場所にいることより、お互い何を意識して、何を話すかということの方が実は大事だということだ。リモートワークは文字ベースでのやりとりが中心だと思われるかもしれないが、実は「ちょっと今からいい?」と5分だけZoomで話すこともでき、相手の顔や目を見てコミュニケーションをとることは十分にできる。

 当社では、個人が仕事をする中で感じた「違和感」や「モヤモヤ」を飲み込まず表に出すこと、自分の得意なことだけではなく苦手なことを話し、お互いによく聞くことを大事にしている。

 こうしたルールと日々の実践が、お互いの心理的安全性や、会社が目指すことと自分の重なりを感じるエンゲージメントも高めると考えている。

著者紹介:猪尾愛隆

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 JOINS株式会社 代表取締役。1977年、東京都生まれ。2002年慶應義塾大学大学院修士課程修了。博報堂に入社し、法人営業を3年間経験。2005年、ミュージックセキュリティーズ入社。投資型クラウドファンディングのプラットフォーム事業を立ち上げた。2017年6月に退職し、大都市の副業人材と地域中小企業をつなぐ人材シェアリングサービスを提供する「JOINS」を創業。


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