Search

手数料を無料化して証券会社はどうやって利益を出すのか? - ITmedia

jn.prelol.com

 ネット証券を中心に、国内で株式売買手数料の無料化の流れが進んでいる。現在も、SBI証券と楽天証券では1日100万円まで手数料はゼロだが、さらにSBI証券と松井証券では25歳以下の完全無料に踏み切った(記事参照)。

 しかし、売買手数料を無料化して、いったいどこで利益を出すのだろうか? 利用者の中には、「どこかに落とし穴があるのではないか」と不安視する声もある。このからくりを解くために、先行して手数料を無料化している米国の証券会社が、どうやって利益を出しているのかから見ていこう。

米国の流れ

 米国で手数料無料化に先べんを付けたのは新興の証券会社ロビンフッドだ。2015年に手数料完全無料でサービスを開始し、若年層の支持を受けた。20年のコロナ禍では春からの3カ月で300万人の新規ユーザーを獲得し、ユーザー数は1000万人を突破。個人投資家が特定銘柄に集中し株価を押し上げる出来事が起き、ロビンフッド事件などと呼ばれたのは記憶に新しい。

 ロビンフッドに続き、大手オンライン証券会社のチャールズ・シュワブも19年10月に完全無料化を果たした。米国では、手数料競争が進みオンライン証券の再編が起こっている。

 ではこうした証券会社は、どのようにして収益を得ているのだろうか。

米国の収益化方法 PFOF

 ロビンフッドのビジネスモデルは、そもそも売買手数料に依存しないものだ。収益の半分は「ペイメント・フォー・オーダー・フロー」(PFOF)という仕組みで稼いでいる。残り半分が、信用取引に伴う金利収入となっている。

 PFOFとは何か。「顧客からの取引をヘッジファンドなどのマーケットメーカーに回し、リベートを受取る仕組みだ」と説明するのは、国内で唯一、売買手数料完全無料のサービス「ストリーム」を提供する新興の証券会社スマートプラスを傘下に持つFinatextホールディングスの伊藤祐一郎CFOだ。

売買手数料完全無料のサービス「ストリーム」を提供する新興の証券会社スマートプラスを傘下に持つFinatextホールディングスの伊藤祐一郎CFO

 なぜ取引を買うヘッジファンドがいるのか。まずは日米の株式取引所の違いから理解する必要がある。ほぼ全ての取引が東京証券取引所に集まる日本とは違い、米国では複数の取引所が存在する。ニューヨーク証券取引所(NYSE)、ナスダック証券取引所が2大巨頭だが、そのほかにもCBOEグループの取引所など16もの取引所が乱立している。

 このとき、全ての取引所の取引情報を組み合わせて一つの板にするのではなく、各取引所はメイカー/テイカープライシングモデルという仕組みを取っている。これは取引所が、流動性をもたらした指値注文者(メイカー)に対価を支払い、その相手となって成行注文で応じる注文者(メイカー)から手数料を徴収するというモデルだ。

 各取引所は利用者を増やし、板を活発にさせる目的でメイカーに対価を支払って呼び込んでいる。ちなみにこれは仮想通貨取引所でも一般的で、国内でもいくつかの取引所はメイカー/テイカーモデルを用い、指値の注文者に対価を支払っている。

 もう一つ、ヘッジファンド側の事業モデルも見ておこう。ここでいうヘッジファンドは、高頻度取引(HFT)事業を営むものだ。これは、複数の取引所の価格を見ながら、ゆがんだ価格があった瞬間にその差を取るという手法になる。「同じ銘柄がこっちでは99円、別の取引所では100円で売られている瞬間に、99円で買って100円で売る。取引のボリュームが多いほどたくさんマッチングできる。だから取引フローがほしい」(伊藤氏)

PFOFの仕組み(フィナテキスト資料より)

 この市場のゆがみから収益を得る手法はスピード勝負だ。自分よりも先にほかのHFT事業者がゆがみに気づいてしまったら、ゆがみは解消されてしまうからだ。ここで、ロビンフッドから注文を買うことのメリットが出てくる。「ロビンフッドから来る個人の発注を受けて、平均よりも安いところがあったら、そこを注文をぶつけることができる」(伊藤氏)わけだ。

米国の収益化方法 銀行との連携、IFA

 もう一方の手数料無料の証券会社、チャールズ・シュワブは収益化の手法が異なる。「ロビンフッドはトレーダー系が多いが、チャールズ・シュワブは資産形成系の利用者が多い」(伊藤氏)からだ。

 チャールズ・シュワブの顧客はまとまったお金を証券会社に入れるが、そのすべてを投資に回さず現金で置いておく人も多い。この現金を、グループの銀行口座に入れて、米国債などに投資して金利を得るモデルが一つだ。

 もう一つは独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)との連携だ。米国では、証券会社と営業マンが分離しているところが多く、証券会社は取引プラットフォームを提供し、営業マンはIFAとして顧客にアドバイスを提供するという役割分担が進んでいる。チャールズ・シュワブはIFAに取引プラットフォームを提供し、顧客からの報酬をIFAと分配する形で収益を得ている。

こうした別の収益源は日本では?

 では、こうした取引手数料とは異なる収益モデルは日本では成り立つのだろうか。まずロビンフッドがやっているようなPFOFを日本で全く同じようにやるのは、メイカー/テイカーモデルではないこともあり難しい。「普通の証券会社もB2Bではどこでもやっている。しかしB2Cでやっている事例は少ない。ここまでの規模でやっているのはロビンフットだけではないか。フローがたいへん多いから可能になっている」(伊藤氏)

 銀行口座との連携はどうか。日本でも、SBI証券と住信SBI銀行、楽天証券と楽天銀行をはじめ、auカブコム証券とauじぶん銀行など、証券口座と銀行口座を連携させるサービスは急成長している。しかし大きな違いは、銀行口座にある現金を収益化する手法にある。

 米国ではコロナ禍で下がったとはいえ、安全資産である米国債への投資で1〜2%のリターンが見込める。ところが、日本国債の利回りはほぼ0%だ。これでは、現金を集めても別途リスクを取らなければ利益を生み出せず、同じモデルは成り立たない。

 「ロビンフッドであればPFOFで成り立っている。チャールズ・シュワブもIFA手数料、銀行スイープの金利収入だ。こうした大きな収益源は、今の日本の環境、規制と債券金利を見ると日本で作るのは難しい」(伊藤氏)

 ちなみにストリームは手数料は無料ながら、顧客の注文を東証だけでなくダークプールにも流し、ダークプールのほうが有利な価格で約定した場合は、差額の半分を受け取る形で収益化している(記事参照)。残りの半分は顧客に渡す。同様のスマート・オーダー・ルーティング(SOR)という仕組みを実装している証券会社は多いが、追随は難しいだろうと伊藤氏は見ている。

 「理論上は難しくない。ただし取引システムのところにかなり手をいれることになる。差額を全部証券会社が受け取る、顧客に全部返すのなら簡単だが、全部返してしまっては収益にならないので、ストリームと同様の仕組みを作るのはなかなか難しいのではないか」(伊藤氏)

IFAの可能性

 ただしIFAだけは別だと伊藤氏は言う。日本の証券業界でも、証券会社と証券営業の分離が急速に進んでいる。IFAの利用者は急速に増加しており、またSBI証券と楽天証券はIFAとの連携を進めている。

 ネット証券を使い手数料無料で取引ができるようになったといっても、どんな銘柄を選んで、どんなタイミングで投資するかを専門家に任せたいというニーズは根強い。しかし、証券会社に所属する営業担当は、自社の収益のために、利益率の高い商品を積極的に売り込むなどの過去の慣行から抜け切れておらず、顧客側に立って投資実務を行うIFAが注目されている。

 もっとも、どの証券会社も売買手数料依存から抜け出せるかというと、そんなことはないだろう。「チャールズ・シュワブは手数料無料化の前から、収益に対する売買手数料比率が小さかった」と伊藤氏が話すように、現在のメインの収益源を捨てて、新しいビジネスモデルに移行するのは容易なことではない。SBI証券のように、売買手数料比率がすでに小さいところでなければ、簡単には手数料無料化を進められないわけだ。

証券会社の営業収益構成比はそれぞれかなり異なる(SBI証券決算資料)

 米国ではユーザーが手数料の多寡に敏感で、既存の対面証券会社からチャールズ・シュワブのようなオンライン証券に一気に顧客と資金が動いてきた。ところが、日本では未だに対面証券会社が強く、個人金融資産のほとんどは動いていない。その理由の1つは、米国ではIFAが浸透しており、顧客の資金を預かるIFAがより顧客にとって有利なオンライン証券に資金を動かしたためだといわれている。日本でも同様のことが起こるかもしれない。

 「日本でも、この数年IFAが伸びる。顧客が対面証券会社ではなくIFAを選ぶ中で、資金が動いていくだろう」(伊藤氏)

Adblock test (Why?)



"どうやって" - Google ニュース
May 07, 2021 at 10:00AM
https://ift.tt/2PWMq4t

手数料を無料化して証券会社はどうやって利益を出すのか? - ITmedia
"どうやって" - Google ニュース
https://ift.tt/2DFeZd1
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
https://jn.prelol.com/

Bagikan Berita Ini

0 Response to "手数料を無料化して証券会社はどうやって利益を出すのか? - ITmedia"

Post a Comment

Powered by Blogger.