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昔の“除雪”どうやってた? 現存唯一のSL排雪列車「キマロキ」編成 冬のヒーローだった記憶 - Au Webポータル

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宗谷本線名寄駅近くに展示保存されている鉄道車両「キマロキ」編成は、北海道をはじめ雪国の鉄道を陰で支えた立役者といわれています。連結されている4の車両の頭文字をそれぞれ取った名前で、キは機関車のキ。どのような列車だったのでしょうか。

キ+マ+ロ+キ だから「キマロキ」編成

 旭川から宗谷本線の特急列車に乗ること約1時間。名寄駅にさしかかる頃、高台にSLの姿が見えます。機関車を前後に連結した4両編成は、旅客列車ではなく、「キロマキ」と呼ばれる特別な“編成”です。

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SL排雪列車「キマロキ」編成(須田浩司撮影)。

 この編成はSL時代の「排雪列車」です。排雪列車は北海道をはじめ、雪国の鉄道を陰で支えた重要な存在ですが、今も1編成まるまる展示保存されているのは名寄市だけ。正式には「SLキマロキ編成排雪列車」と呼ばれ、札幌鉄道局苗穂工場(当時)の羽島金三郎氏が1926(大正15)年に欧米を視察し、それをもとに考案したものだそうです。

「キマロキ」の名称は、機関車の「キ」(9600形 59601号機)、マックレー車(かき寄せ式雪かき車)の「マ」(キ911号機)、ロータリー車(回転式雪かき車)の「ロ」(キ604号機)、そして機関車の「キ」(D51形398号機)をとったもの。ちなみに、マックレー車は1928(昭和3)年に国内で初めて苗穂工場にて製作され、ロータリー車と組み合わせた編成が生み出されました。まさに北海道産の編成列車だったわけで、画期的な除雪方式として世界的に話題になったといいます。

「キマロキ」の4両で十分に作業はできるものの、実際の運用では、最後尾に連結している車掌車を含めた5両編成が完全な姿でした。その全長は約75m。これだけでも十分に長いといえますが、本州ではさらに長い「ララキマロキラ」編成(ラッセル車2両+キマロキ編成+ラッセル車)や「ロキヤキマロキラ」編成(ロータリー車+機関車+除雪作業員30名を乗せた職用車+キマロキ編成+ラッセル車)なども出動したといわれています。

スピードはわずか10km/h 汽笛や手旗を頼りに

 では、実際の排雪作業はどのように行われていたのでしょうか。線路の除雪はラッセル車で雪を両側に押しのけるのが一般的ですが、豪雪地帯ではそれを続けていくうちに線路の両側に雪がたまって高い雪壁となり、ラッセル車では対応できなくなってしまいます。そこで、排雪列車「キマロキ」編成の出番です。

「キマロキ」に出動指令が出されると、機関士と保線区員ら数十人が手分けして乗り組み、排雪区間へ向かいます。先頭の機関車にけん引されたマックレー車が“逆八の字”形に広げた翼で白い雪の壁をぐいぐい突き崩して雪をかき込み、続くロータリー車が大きな羽を高速回転させながら雪を遠くにはね飛ばし、それを後部の機関車が後押しします。

 合図は汽笛や係員の手旗が頼り。全員の呼吸が合わなければ立ち往生するという難作業です。しかも時速も10km/hほどと低速だったこともあり、1回の作業で1週間から10日ほどかかっていました。低速の理由は、速度が速いと雪壁を崩すマックレー車にかかる負荷が大きくなり、また集められた雪がロータリー車の排雪能力を超えてしまうためです。

 とはいえ、当時は冬の道路の除雪が行われていなかったり、そもそも自動車も少なかったりしたため、生活の足は鉄道に頼っている時代でした。それだけに、この偉大な機械力に鉄道関係者はもちろんのこと、沿線住民も信頼を寄せていたといいます。

 しかし、DD14形やDD15形などの除雪用ディーゼル機関車が登場すると、次第にSL排雪列車の出動機会は減少。SL牽引の営業列車が廃止(無煙化)された後も、ディーゼル機関車の能力を超える豪雪時には出動する場面もあったそうですが、時代の移り変わりとともに、やがて引退を迎えます。

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「キマロキ」編成の内訳(須田浩司撮影)。

 いま名寄で展示されている「キマロキ」編成は、国鉄当局から当時の排雪編成のまま貸与されたものです。1976(昭和51)年10月から名寄公園の高台で展示保存されましたが、1989(平成元)年4月のJR名寄本線廃止後に跡地を含めた地区の博物館建設計画が進められ、1993(平成5)年6月、現在の場所へ移設。すぐ近くを走る宗谷本線の列車内からも見られるようになりました。

保存から40年 「名寄のシンボル」に

 名寄の「キマロキ」編成は、全国でもここでしか見られないことや、車両の歴史的・文化的価値の高さなどが認められ、2010(平成22)年にJR北海道が準鉄道記念物に指定しています。

 保存開始から40年以上経過していますが、状態はとても良好です。一部制限はあるものの、各車両とも実際に乗って見学することもできるようになっているほか、機関車はヘッドライトが点灯し、ブラスト音が発生するギミックも仕掛けられています。

 良好な保存状態を保っているのは、ひとえに、40年以上も活動を続けている「名寄SL排雪列車(キマロキ)保存会」の尽力のおかげ。定期的に塗装作業を行ったり、冬期間(10月~翌年4月)にはビニールシートで冬囲いするなど、「キマロキ」編成を大切に扱っています。2013(平成25)年には、長年の車両保存活動と雪国の生活を伝える活動が称えられ、平成25年度北海道文化財保護功労賞を受賞しています。

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準鉄道記念物を示すヘッドマーク(須田浩司撮影)。

 名寄駅から展示保存場所まで乗車したタクシーの乗務員は、「この列車は、名寄市のシンボルであり、名寄市民の誇りなんですよ」と話しました。名寄市は、かつて名寄本線や深名線の起終点でもあった道北地方における交通の要所。そのシンボルとして、「キマロキ」編成は今でも名寄市民に広く根付いているのです。

「キマロキ」編成は、名寄駅から徒歩16分の名寄市北国博物館敷地内に展示保存されています。博物館では「キマロキ」関連の書籍も販売されていますので、街の散策がてら訪れてみるのも良いでしょう。

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June 07, 2022 at 07:42AM
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